まだまだ現役、昭和20年代、70歳の日本の家屋 すまいる情報一戸建て再生・共同プロジェクト

株式会社ジョイテック代表 
土田 明彦 さん

 

土田さんは、私の前職の後輩という本音でやりとりできる安心感から、共同で色々な不動産プロジェクトを推進しています。

現在では建て替えが出来ない家とか、崖地の土地等、「難物」をお願いすることが多くあります。

 

当人は難物「だけ」が好きな訳ではないとおっしゃいますが、あるものを活かす、三法良しの方法を見つける、という点で私と共通した考えをもっていますので大手不動産で断られたものや、時間がかかりそうなものを扱うことが多くなってしまうとのこと。

 

その中の一つに、昭和20~30年代に建てられた家をリノベーションして再生するプロジェクトがあります。

まさに、私が生まれ育った家に近いものでもあり、郷愁もあって力が入ります。

共同で取り組んでいますのでご紹介させて頂きます。(竹内)

 

 

Aさんが70年近く住んだ家の付近(東京都北区)

 

2018年3月号で取り上げた都内に住むAさんの家が今回の物件です。

昭和25年頃に建てた家に住み続けて70年近く、90代になり老人施設に行くことになったので手放されました。

 

持ち主さんが大工さんだったのでチョコチョコと手入れされていたことと、建て直すと斜面の造成に相当なお金がかかるから、リノベーションして、このまま活かすプランになりました。

 

 

最近は、画一的な建売住宅より古い家の方が個性的で良い、という若い方もいらっしゃいます。

ただしあくまでデザインのことで、古い家の居住性は好みません。

家の主要な部分だけ残して一新するリノベーションが必要です。

昔の家は、台所が狭く、内風呂がないのが普通でしたから、ここの改善が中心になりました。

あとは、斜面を活かして遊び心を加え、最終的に、平屋の3Kが、1LDK+デッキ+ホビールーム+地下室になりました。

 

 

先の戦争の時に空襲被害がなかったので古い一戸建てが残っている地域でしたので、地域に溶け込むように、外観はあまりいじりませんでした。

それだけに、外から見ると築70年、中に入ると新築のギャップが楽しい家です。

土田さんとは、空襲危害が少なかった地域や下町の古い家を、もっと手がけて、もったいない精神を不動産で示して行こうと話し合っています。

 

ご実家などで、古い家をそのまま放置してある、今の法律では建て替えが難しいのでどうしようか、とお悩みの方がいらっしゃいましたら、私までお気軽にご相談下さい。

 

なお、リノベーションにあたっては、耐震性や建物の傷み具合をよく調査して進めますので、建築基準法が施行された昭和25年以前の建物は、詳しく検査致します。

 

 

 

●リノベーションが完成したところで、元の持ち主Aさんの弟さんに家を見て頂きました。

自身この家で中学生の時から結婚するまで暮らした家ですから、どのように変身したか、大変興味をもってご覧頂きました。

 

「この部屋で勉強し寝ていました。60年前の自分がいるようで不思議です。」

 

「お風呂は銭湯でした。後で兄が浴室を作りましたが、これなら寒くないですね。」

「間取りも変わっているので、記憶をたどって思い起こしてみました。

でも窓からの景色は、遠くの街のビル以外は60年前と同じです。

友達と遊んだ裏山や、走り回った路地、友達の声まで思い出せます。」

 

「こんな遊び部屋の地下室だったら、秘密基地みたいで今なら籠ってしまいます。」

 

「ここから学校へ通い、勤めにも行っていたのが信じられないくらい狭いですね。

プライバシーもなかったですが、みんな寄り添ってぶつかりながらも、

隠し事のない生活だったと思います。」

 

「今回、高齢の兄に代わって私が売却の手続きをしましたが、

家は取り壊されるものと思っていました。

 

室内は驚くほど近代的に変わっていましたが、

回りの景色や建物の外観は、ほとんど変わっていないので、

すぐ記憶が蘇りました。

 

他の兄弟も、戦後の大変な時代に過ごした家が

いまだに存在していることに、みんなとても喜んでいます。

 

春に家から花見が出来ること、夏の涼しい風通しは保証しますので、

ぜひここに住まわれる方は生活を楽しんで頂きたいと思います。

施設に行った兄に見せたら、戻りたいと言い出すのは確実なので、

見せられないことだけが残念です(笑)。」

 

Aさんの弟さんから昔話を伺いました。