語らずとも 一緒に居られる今年は改元の年、平成が終わります。

 

世界諸国では元号は関係ないのですが、日本人の心象として、元号でイメージを捉えることが多くあります。

「明治の気骨」とか「大正ロマン」「昭和の香りがする街」など、それだけで何となく了解してしまいます。さて平成の枕詞はいかに?

 

総務省の2年前の統計ですと、明治大正生まれの方は、全国で約205万人、今は120万人位ではないかと思います。

 

仕事でお会いするお客様は、お達者な方が多いのですが、それとて何か具合の悪いところ、言い表せない憂いを抱えていらっしゃることが殆どだと思います。

そのような気配を相手に見せない、という惻隠の情のようなものを感じ、こちらからも敢えて話題にしないことが礼儀と心得ることがよくあります。

 

つらいこと、悲しいことは、できるだけ静かに自分で耐えて何も言わず、人の悲しみや苦労には慈しみをもって接することができる、それが最高の人間関係だと作家の曽野綾子さんはおっしゃっています。

大正生まれだった私の父母にも、そのような所作を感じましたし、先の大戦前生まれの方にも感じる事が多くあります。

 

私は、大好きな良寛さんが書にし、相田みつおさんが「憂い」という詩にして有名になった白隠禅師の美しい言葉を、人と接するうえで大切にしたいと、常にはできないながら心に留めています。

大燈国師の句に、江戸時代の白隠禅師が付けた下語(あぎょ)です。

 

君看双眼色(きみみよや そうがんのいろ)

不語似無憂(かたらざれば うれいなきに にたり)

 

私の両の眼を見てごらん

語らないからといって

憂いがないわけではない

何も語らない眼の底にある私の哀しみを

あなたは分かってくれるだろうか

 

と良寛記念館では解説されています。

 

◇ ◇ ◇

 

何にも言わなくても一緒に居ることの大切さを、仕事でも私事でも実行して行く年にする、と誓って新年のご挨拶とさせていただきます。

隠身の方とさまざまな出会いがありますことを楽しみにしております。

 

どうぞ今年も宜しくお願い致します。

 

 

竹内 健二