Tさんから、住宅を購入するか、賃貸のままが良いか、相談に乗って欲しいとご依頼がありました。

Tさんは平成バブル崩壊後に就職して25年、結婚してからずっと賃貸住まいの47歳でした。

就職して以降、家の価格がどんどん下がり半値になるのを間近で見て、購入するのが恐ろしくなってしまったのと、会社から家賃補助も出ていたので、あまり購入しようという気にはなれませんでした。

 

バブル崩壊後は、賃貸の方が得!みたいな週刊誌の記事も多く、家は賃貸でライフスタイルに合わせて好きなところに住む方がカッコいいという、世間の風潮もありました。

 

ただ、早々に家を買った同期が、そろそろローンも終わるし、とりあえず老後の家はあるから安心という会話を聴いて、少し心穏やかでない気持ちになりました。

会社も、家賃補助を減らしてきて、持家のほうが補助が多くなってきたのも、考え始めたキッカケです。

 

 

Tさんにはまず、結論から言うと、「どっちでも良いのです」と申し上げました。

住宅雑誌が、購入が得か賃貸が得かという特集を定期的に掲載しますが、スポンサーがマンション業者ですから、購入が得という結論に導かれていることが多いですし、家計評論家が計算しているのは、今後も雇用が安定していての話、大会社でもどうなるか分からない時代です。

早く購入した同僚も、幸せかどうかはわからないのですから気にする必要はありません。過去には戻れないのですから、今まで払った家賃を計算してはいけないのです。

 

では損得で計算しないで、どのように決めるのか。

それは不確実なことと、確実なことを分けて、確実なことで安全圏の計画を立てることをお勧めしました。

 

 

不確実なことは、雇用、収入、健康、大きく言えば世界経済と平和など。

確実なことは、子供の成長、定年、夫婦とも年をとること、生活費、親の介護と死など。

 

買った方が得か賃貸の方が得か、みたいな他人が作った単純な二択の枠に囚われないよう、多くの選択肢があることをお話ししました。

 

家は、間取りだけでなく、家族との関係で狭いほうが密着する、環境や学校や近所との人間関係、街の雰囲気まで含んで「良い家に住んだ」と実感できるものです。

40年近くこの仕事をして、お金的には損した方、得した方、数々のお客様と関わって来ましたが、いよいよ終の棲家を出たり、最後の時を間近に控え、損得をおっしゃった方は皆無に近いです。

 

「近い」と言いましたのは、得を狙って無理をし、失敗した方が少しだけいらっしゃったからです。

ほとんどの方は、例え価格が半分になっていても「当時はそんな高いものも買えたんだなあ」と誇らしげに懐かしむ方が圧倒的です。

 

 

お世話させて頂いたお客様の実例では、貯めた預金を運用し、自身はその利益で借りられる賃貸生活をされる才覚のある方、この場合は、借りる人がいなくなったら自分たちが住んでも良い、という基準です。

 

親からの遺産で、都内に小さなマンションを購入して賃貸し自分のお小遣いにしている方は、将来自分が一人になった時に住んでもいいという基準です(あくまでも寡婦になったらの話です、あしからず)。

 

子供たちとDYIをするのが好きな方は、古めの一戸建てを購入、孟母三遷、子供の教育第一の方は賃貸で身軽に動けること、など考え方などで千差万別なのです。

共通するのは、自分で決めたことは、損得を超越するということだと思います。