こんにちは、竹内です。

短い秋になりそうですがお風邪など召していらっしゃいませんでしょうか。

 

NHKBS1の世界のドキュメンタリーが好きで、先週は「トマト畑のワーグナー」というギリシャのドキュメンタリーを視ました。

トマトに音楽を聴かせると良いらしいという事でオーガニックなトマトを作って、そのソースを販売しようとする、都会から帰ってきたリーダー的な男性と年配の農婦たちの物語でした。

 

売れずに苦戦していたので、村を出たことが無い女性たちが、自分たちが作った商品を見に行こうと、ベルギーに「田舎者のお上りさん」状態で行きます。そこでバイヤーに「誰が作ったか書いてないし、消費者は物語を求めている」と売れない理由を言われます。

番組はギリシャに帰ってきて、畑で一人一人、はにかみながら写真を撮るところで終わります。

 

日本では生産者の顔写真を出したり、作る苦労話や思いを出すことが、当たり前のように公式化して心に響かないこともあるのですが、このギリシャの農婦たちの物語は、見終わった後もジーンと心に残りました。

感動話に仕立てたりすることが一切ないのに、どうしてだろうと考えてみましたら、この農婦たちの深刻ぶらず、あざとさが全くない素直さと、陽に灼けた皺だらけの笑顔がとても素敵だったのだと気づきました。

広告や物語などの理屈が無くても、笑顔で売れる時代のほうが、進んだ社会かもしれません。

それは理屈で判断せず、自分の生存本能を賭けた直感で動く世の中だからです。「笑顔が素敵な人」これが良い歳の取り方だと感じた番組でした。

 

 

93歳でアトリエで亡くなるまで絵筆をとり続けた、大好きな女性日本画家の秋野不矩(ふく)さんの絵画展を観に平塚美術館に行きました。

54歳からインドに度々渡り、インドで日本画を教えるほどになりましたが、たくさんのインドの風景を描いていらっしゃいます。

 

秋野さんの描くインドの風景は、ほとんど褐色の色使いです。

観光地ではなく、昔の栄華の跡地だったり、最下層の人達の営みの地であったり、ガンジス河なども、雨上がりの褐色の河で、その河の中を首まで水につかって渡る水牛の群れを描いた絵など、とても神々しい雰囲気を醸し出しています。

 

牛が神聖視されるインドでも、水牛は家畜であり食肉用の、神聖視されない牛で、秋野さんの眼差しの先は一環しています。

 

そんな茶色と黒ばかりの絵を見ると、秋野さんが、優しい眼差しで微笑みながら描いていたと想像されます。

ギリシャの農婦の笑顔と共通する、今見えているものの中に、いにしえの人々の営みと自然の恵みが見えることで、今生きている有り難さと優しい微笑みが生まれてくるのではないかと思います。

 

 

いい笑顔の方に共通していることがあります。

それは、何かを思った瞬間に、身体が動いていることです。お手本のない時代を生きて行くのに、笑顔と直感は大いなる道先案内役になるものと思います。

 

 

竹内 健二