寄与分の計算式はあるけれど

私がお受けする相続のご相談で多い事例は、故人の介護への献身や家を守ってきた人への相続財産の配分が公平でなく財産分与で紛争になってしまうケースです。

法律は、法定相続を優先します。

 

相続法改正で、寄与分を裁判所が算定してくれるようになりましたが、親子なら通常するだろうレベルでは寄与分を認めてもらうのは難しく、結果として身を粉にしてお世話した人が割を食ってしまうことになります。

 

もっとも、遠方に住んでいて物理的に手助けできない、配偶者の親の介護で手一杯、自身が病気で人のお世話は無理、などの個別事情がある場合や、親子の情が兄弟姉妹均一ではないので、この問題はデリケートなのです。

 

 

認知症で遺言書が書けない!

お世話になった感謝の気持ちを、遺贈や贈与で示す望ましいのは、遺言を書いて予め財産分割の配分を、献身してくれた人に多くしておくことですが、認知症の介護の場合は、そうすんなり行きません。

介護が長期間にわたり、ありがとうという遺言を書くときは、認知症が進行していて遺言が書けない、という矛盾が発生してしまいます。

 

結果として、認知症の末に相続になった場合は、遺言無しで分割協議になり、「争続」になってしまいます。

 

 

貢献には遺贈を活用しよう

まして、相続人でない人、例えば相続人のお嫁さん、孫とか、家政婦さんなどが献身してくれた場合は、遺産協議から排除されてしまいがちです。

 

遺言を書いてその方に遺産の一部を「遺贈」することを記しておくことが本当の感謝に報いることだと思います。

遺贈とは、遺言で特定の誰かに財産をあげることです。

 

通常は相続人へは「相続させる」、相続人以外へは「遺贈する」と記します。

相続税が発生する場合は、相続人以外は相続税が2割増になりますが、こうしておけば、献身してくれた人に報いることができます。

 

遺言に残しておかないと、献身してくれた人が寄与分を主張しなくてはならないので、相続人と争ったり大変なストレスを残してしまいます。

 

 

トラブル回避には死因贈与も

相続にしろ遺贈にしろ、贈りたい人が一方的に遺言に書いておく形ですが、「死因贈与」という方法で遺産を相続人以外に渡す方法もあります。

 

「贈」の字が入っているので遺贈と紛らわしいのですが、全く異なります。

贈与契約なので、もらう人も合意してないといけないのです。

 

亡くなった時に効力を発する贈与のことで、口頭でも有効ですがトラブル回避のために贈与契約書にしておいたほうが良いでしょう。

 

相続ではなく贈与なので、遺産協議に参加する必要はなく、他人が協議に参加して肩身の狭い思いをすることはありません。感謝の気持ちを生前に伝えられます。

 

生きているうちに、もっと明確にしておきたい、という方には「生前贈与」もあり得るでしょう。

相続人以外の人に生前贈与した財産は、相続税の計算から除外されるメリットもあります。

もちろん、遺贈にしても死因贈与にしても、相続人の遺留分を侵さないようにして、余計な手間をお世話してくれた人に掛けさせないようにします。

 

いずれにしても、お金の多い少ないではない純粋な献身の気持ちと行動を、財産の額で現さざるを得ないのが相続の難しいところです。

ぜひ後々の感情のもつれを防いで、献身してくれた人に死後も感謝されることに私も貢献したいと思います。