不動産の三極化と言われるが・・・
よく言われる不動産の三極化とは、「どんどん人が集まり発展してゆく街」「なだらかに衰退して行く街」「人がいなくなる街」、のことです。
不動産相場に置き換えると「価格は維持され、または値上がりし、資産価値を保つ街」「徐々に値下がりして行く街」「タダでも買い手がいない街」となります。
心理学で2・6・2の原則という理論がありますが、ぞれぞれ2割・6割・2割という感覚です。
高度成長期、人口が増えていた時代は、住みたい街に住むというよりは、予算内で買える街という選択肢が主流で、多くの郊外ニュータウン、分譲地が開発されました。
高齢化、少子化が進んで、これらの一部は限界集落化に向かっている地域もあります。
世の中が安定していた今までは、都心からの距離とか、路線の便利さ、築年数など、数値化できる物差しが有効でした。
物件の検索サイトで見られる「条件検索」です。
しかし、条件検索は、その時点のことしか分かりません。
世の中の変化が速い時代になってくると、数値化できない部分で物差しが必要になってきます。
子育てのためにしろ、終の棲家にしろ、この変化をどう見るかの物差しが、これからはとても重要になってきます。
過疎地が復活したり、人気が出て人が集まってきたりすることもあります。
一方、現時点では上位2割のグループに入っていても、徐々に衰退グループに入って行くこともあり得ます。
不動産、住宅は、長期的に人生を支えるものですから、今人気かどうかよりも、これから発展して行くか、復活するか、のほうが大事だと言えます。
今後の物差しは「経営感覚」
市長(町長、村長)が、経営感覚をもって取り組んでいる街の復活、発展が目につきます。
前職が経営に携わっていたり、専門の研究をしていたり、一見畑違いの分野から来た首長の街が話題になっています。
経営感覚とは、企業経営と同じで、支出(歳出)を上回る収入(歳入)を実現して黒字経営に持って行くことです。
よく話題にされる千葉県の流山市は、「母になるなら、流山市。」というキャッチコピーを掲げて、様々な子育て施策で若い世代を集めて歳入(売上)が20年で2倍になりました。
若い家族集まる→家が増えて固定資産税収入が上がる→所得がある人が増えて市民税収入が上がる、という「売上増加」策です。
東京通勤圏の流山でなく、地方過疎地と言われる町でも、人が集まり町の経営が成り立っているところがあります。
地方創生の聖地と言われる徳島県の神山町は、IT化を進めて様々なスキルを持った若者が集まり、企業がサテライトオフィスを設けたりしています。
「創造的過疎」というキーワードを掲げて、少子化、人口減を防ぐのではなく、子供は減っても、その中身を変えて行こうと、日本初の私立の理系高専(高等専門学校)を作りました。
これなども、付加価値をつけて高単価で売る、という経営感覚そのものです。
変化を嫌い補助金で食いつなぐだけの町には明日があるとは思えません。
どんな首長か、という物差しはとても重要になってくるでしょう。
もう一つの大事な物差しは「愛着」
町おこしの専門家に、町おこしの成功失敗の話を伺ったことがあります。
失敗のほうは、やたらとイベントや箱物を作って人を呼ぼうとするケースでした。
一過性で終わることが多く定着しません。
成功のほうは、そこに住む人たちが、自分の街にとても愛着があり、大きなイベントなどなくても地元の人と交流すると、また来てみたい、この街に住んでみたいと思わせるケースだったとのことでした。
地元の人が「こんな田舎早く出たい、こんな所に来るなんて物好きだな」と白けてイベントだけは賑やかにやっているのと、「何にもないかもしれないけれど人が好くで、自然も素敵で一生ここで暮らしたい」と住んでいる人が愛着を持っている街のどちらが、住みたい街なのか明白です。
不動産的に見れば、例えば新浦安のように、出て行きたい人が少なく、入ってきたい人が多ければ、需要と供給の関係から価格は落ちにくく資産価値が維持されると推定できます。
愛着のポイントは、地域によって違いますが、地元の人が、ここを離れたくない魅力がある点では同じです。
都心部で言えば、町内会がしっかり機能していて、古くからの伝統が受け継がれている、観光スポットが近く地元の人も自慢に思って保持しようとしている、などのポイントになります。
こういった街は、自治意識が高くお役所任せにせず役所に影響力がある住民が多くいます。
結果、無軌道な開発が避けられ治安も良く、女性が多く住む街になります。
選択眼の厳しい独身女性の居住率が高い街はハズレがありません。
すまいる情報東京 代表取締役社長
公認不動産コンサルティングマスター
竹内 健二