千代田・港・中央の都心3区が圧勝の不動産市場

2012年に安部政権になってから、都心3区+新宿・渋谷を入れた5区の不動産は、150%前後の値上がりとなりました。

都区部全体ですと130%前後、千葉・埼玉・神奈川は110~120%前後ですから、都心3区の上がり方は急激なものがありました。

日経平均株価と都心部の不動産価格は同じ動きをすると言われていますが、それだけ実需に加えて、投資のお金が流れ込んでいるのが圧勝の理由と思われます。

 

それに加え、2015年の相続増税が、タワーマンションの購入による節税に拍車をかけました。

投資と節税による、マンションは150%の値上がりを見ましたが、土地や一戸建てはアベノミクス後でも横ばいなのです。

土地や一戸建ては投資や節税に向かないためで、実需は横ばいであったと言えます。

それだけ、景気回復の恩恵を受けた消費者が多くないとも言えますし、少子化、高齢化が進む今後は、基本的には横ばい、またはやや下げのエリアが半数以上と思っていたほうが良さそうです。

 

オリンピックに向けて、まだまだ造っている湾岸地域は?

マンションは立地が命、と言われます。

立地とは、オフィス地域や商業、医療地域への近さと、便利さ、そして駅からの距離です。そして人気になる街は、そこに大学の数や文化的雰囲気が加わります。

JR中央線沿いが、住みたい街ランキングの常連になっている=価格が高いのは、それらの要素がすべて含まれているからです。

 

広い範囲で見れば、そのようなモノサシになりますが、一つの駅単位でみると、駅からの距離が圧倒的な条件になってきます。

近くて通勤通学が楽、というだけでなく、駅近くは商業施設が充実し、車を手放すライフスタイルもとれます。

つまり、高齢化が進む時代にあって、消費の重要顧客である高齢者が住みたいエリアということです。

 

ところで東京オリンピックに向けて、湾岸地域は1万戸以上のマンション供給が見込まれ、選手村などをオリンピック終了後はマンションに転用しますので、さらに供給は増えます。

週刊誌などでは今後の悲観的な記事を多く見かけますが、都心部へ20分以内という立地で、さらに交通網が整備されるとなれば、それくらいの新規供給を満たすだけの需要はあります。

 

まして共働き世帯が増え、都心部への近さは、住宅購入の条件にとって、ますます優先順位は上がっています。

また高齢者にとっても、大学病院に近いとか、商業施設や文化娯楽施設が近いのは、大きな購入動機になります。

 

問題は、開発が急なため、インフラ整備や、保育園や学校などの設備が追い付かない懸念です。

そのようなエリアは、子育て世代から見放される可能性が高く、そのあたりも人気不人気が二極化してくるでしょう。

 

北千住、浦和が人気の街に、そこにあるヒントは?

長谷工アーベスト社が13年前から実施している「住みたい街ランキング」が今年も発表され、北千住と浦和が大幅に順位を上げ、8位に入って来ました(浦和は昨年19位、北千住は29位、新浦安は2005年までは5~6位の常連でした)。

 

特に北千住のある足立区は、今まで人気とは余り縁がなかったところですが、少子化による学校の統廃合による学校跡地に大学を誘致し、東京電機大や東京芸術大学など、5つの大学が増えました。

大学が増えると大きな敷地ですから環境が良くなり、当然に若者が増え、活気が出てきます。また、鉄道の乗り入れが進み、今では5路線が使えるアクセスの良さです。

 

浦和なども、文教地区のイメージが強く、都心部へのアクセスもよく、駅前再開発も進んでいます。2位の武蔵小杉なども駅前再開発により急激に人気が上昇した駅です。

単なる人気ランキングで面白がっているのではなく、少子化、高齢化が進む中、深刻な問題を示唆しています。

人が集まる街は、商業や施設が充実し、交通インフラが整備され、税収が増えることで、ゴミや道路、上下水道、学校などの行政サービスが充実し、ますます人が集まります。

一方人が集まらない街は、インフラの整備にかかる住民負担が増え、行政サービスが手薄になり、ますます人が減って行くという、二極化が進むことが問題になってくるでしょう。

 

北千住などは、放置自転車を減らすことで、イメージアップと犯罪認知件数の減少に取り組んでいるそうです。

また、日本一おいしい給食を目指していることで話題になりました。そのような努力と、大学、駅前開発、交通などが総合的に魅力となった結果だと思います。

 

やはり、行政が明確なビジョンをかかげたところは強いと改めて思います。

これからの住宅選び、住むエリアの選択は、どのような街づくりのビジョンがあり、実行されているか、そういう時代になってきたと言えるでしょう。


すまいる情報東京 代表取締役社長
竹内 健二