2018年、関東では「横浜」、関西では「西宮北口」

住宅情報大手のリクルート住まいカンパニーが実施している「住みたい街(駅)ランキング」2018年版が2月末に発表されました。

総合ランキングの1位から、関東は横浜・恵比寿・吉祥寺、関西では西宮北口・梅田・神戸三宮という結果でした。

マスコミ的なランキングで話題性はありますが、単なる人気投票では、「ふ~ん、そうなの」で終わってしまう話です。

 

この調査の優れているところは、世代別、現住居地別でも分析されているところです。

子育て中の30代、40代の方が選ぶときは、子育て環境や待機児童数などが気になるところです。

高齢の方が選ぶときは、車のない生活でどれだけ便利か、山坂は少ないか、病院の状況などが気になるでしょう。

また、独身の方が選ぶときは、女性と男性では選択ポイントが異なります。

 

街の活力は、人口と購買力に大きく関係します。

世帯人口が一番多いのは子育て中ファミリーです。

やはり何と言っても子育て中ファミリーが多いところは活気がありますし、学校の関係がありますので、一度住んだら長期間定着します。

そこは、身軽な独身の方と違うところです。

 

子育て中ファミリーでランキングを見直してみると

子育て中ファミリーは単なる憧れで選びません。

買えるかどうか、もっと地に足が付いた選び方をします。

そうしますとランキングが変わってきます。

順位 全世代の場合 子育て中ファミリー
横浜 浦和
恵比寿 武蔵小杉
吉祥寺 横浜
品川 吉祥寺
池袋 大宮

このように、恵比寿や品川、池袋等のターミナル駅は消えて行き、浦和や大宮、武蔵小杉等の郊外ターミナルが現れて来ます。

このような場所が人口が増える要素があり、いったん移り住むと、子供が独立するまで住み続ける傾向があると言えます。

 

もう一つの目安「同じ都県内で住みたいとしたら」

住めば都、とはよく言われますが、人は住むところについては順応性が高く、子供さんがいる家族や高齢の方は、引越しに対して保守的な傾向があります。

 

現在東京に住んでいる方は、引っ越すとしても東京の中、千葉も神奈川も埼玉も、そのような傾向があります。

皆様の中でもそのような方は多いのではないでしょうか。

「どちらの出身ですか」と問われると、大体が都道府県で答えると思います。

江戸以前からの「藩」が一つの国だった影響もあるでしょうし、市町村名を言っても有名なところでなければ相手がわからないということもあるでしょう。

 

その意味で、同じ都県内の人がどこに住みたいか、ということも、街の活力が今後どうなって行くのか、一つの傾向が出ていると私は考えています。

回答を見ると顕著です。5位内は、回答者が現在住んでいる同じ都県の街を選んでいます。

これも憧れだけではない、街の情報が濃い中での選択ですから、人が集まる可能性が高いとも言えるでしょう。

順位 東京都民 神奈川県民 埼玉県民 千葉県民
吉祥寺 横浜 大宮 船橋
恵比寿 武蔵小杉 浦和 津田沼
池袋 海老名 さいたま新都心
目黒 川崎 川越 千葉
品川 鎌倉 所沢 おおたかの森

 

転入超過か、転出超過か

転入数より転出数が多いことを転出超過と言いますが、全国の市町村で見ると、15~64歳の生産年齢人口、いわゆる「働き盛り世代」の転出超過の市町村は80%にも上ります。8割の町が働き盛りの人が減っているのです。

出る人が多ければ、入る人が多い街もあり、それが東京23区、大阪、札幌、福岡などの大都市です。

建設ラッシュによる建築業、訪日外国人の増加によるサービス業などの仕事が増えていることも要因の一つと言われています。

 

「働き盛り世代」が増えるか減るか、街の活力の源ですが、仕事があるか無いかが、大きな条件でもありましょう。

全国あまねく観光地化は難しいでしょうし、企業誘致も立地や運輸の関係から限られてきます。

 

地方創生で活力を取り戻した、いわゆる過疎地、転出超過地から学ぶこともありますが、長期的な課題として考えれば、農業で生活が立ち行くようにする、という方向が、観光や企業誘致に頼れない地域の、大きなテーマでありランキングが様変わりする可能性を秘めたことではないかと思います。

 


すまいる情報東京 代表取締役社長
竹内 健二