都心部発の不動産玉突き現象は続くのか

2022年は、都心部が平成バブル超えと言われるほどのマンション高騰をしたため、都区部隣接の市に需要が移り、それらの地域が値上がりしました。

千葉の浦安市や松戸市、埼玉の川口市、神奈川の川崎市などです。

 

テレワークが増えたとは言え、会社に全く出社しない訳ではなく、あまりにも遠方に引っ越すというのは現実的ではありませんでした。

それは、引っ越し先の市町村の財政力も関係しており、病院や教育環境などの行政サービスも加味して、「都心に近い郊外」が選ばれたものと思います。

 

2023年も働き方は変わらないとして、この玉突き現象は続くものと見ています。

浦安のように開発が終わって新築余地のないエリアは、既存の中古マンションや土地購入による新築一戸建て需要が堅持されるでしょう。

空き地や工場移転などによる新築余地があるエリアでは、新築マンションが牽引車となって市場を維持するものと考えます。

 

2022年12月24日 日本経済新聞より

 

金利動向による変化は?

住宅ローン金利がジワジワと上がっています。

一般的には、金利が上がると返済が増えるので、所得が上がらなければ不動産価格は下がると言われています。

主要国で日本だけ頑張ってきた0金利政策ですが、そろそろ上がりそうな気配です。

 

ただし、居住用の不動産については、金利が上がったり増税による住宅消費の冷え込みをふせぐため、政府が税制で「調整」しやすいのです。

消費税増税のときに、住宅ローン控除を拡大したり、金融資産を持っている祖父母や父母から住宅資金贈与を無税にしたり、というような「調整」です。

財政支出なしに出来る消費対策なので、金利が上がって即住宅相場が下落するというようにはならない可能性があります。

 

一方、賃貸用アパート建設や不動産投資などは、賃料収入が金利上昇と同じように上がらないと、支出が増え、税制の特典もないので、利回りが低下しますので、現金購入者有利の市場になるかもしれません。

 

2023年度の税制改正の影響は?

昨年末発表された与党の税制改正大綱は、一言で表すと「相続税の増税」と言えます。

最大の改正点は、現在相続開始前3年間分の生前贈与は相続財産に組み入れることになっているものを、7年間に広げる点です。毎年110万円ずつ子供に生前贈与していたとして、440万円が新たに相続財産に組み込まれ、相続税を増やせることになります。

もちろんこれは、生前贈与を早めにスタートさせて消費を増やそうという意図もあります。

 

マンションの土地持分が少ないことに目を付けた「行き過ぎた」相続対策も2023年度中に見直す動きです。

都心部の「億ション」の一定数が、相続対策のための購入と言われていますが、当面この対策を手控える方が出てくるかもしれません。

 

コロナ禍によるパラダイムシフトは「量から質へ」

テレワークによる仕事は「頑張っているフリ」が出来ないので仕事の成果が見えやすくなったと言われています。

在宅時間が長くなり、生活の質に注目する人が多くなったことで住宅需要が増したことは明白です。

居住先を選ぶにも、かつての「イメージ人気投票」は鳴りを潜め、子育て支援や起業支援、商業活発、行政サービスなど、住む場所の質を求める方が増え、その要望に応えている市町村が人気となってきました。

 

接待や大宴会で成り立っていた飲食店が厳しさを増し、少人数でも質を求めるお客様を引き寄せたお店が繁盛しています。

住宅も、0エネルギーや100年住宅というフレーズが、以前は特殊に感じていましたが、はからずもコロナ禍によって定着化してきたとも言えるでしょう。     

 

 


すまいる情報東京 代表取締役社長
竹内 健二