木々の歌を聴く【この記事を音声で聴くにはQRコードまたは以下のURLから】
「すまいる通信2023年2月号」 @すまいるたけチャンネル
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こんにちは。代表の竹内です。

コロナによって書籍の売り上げが伸びたそうです。

私は装丁とか重量感も好きなので紙の本派ですが、これはという本に出合った時買うので積読の山は高くなるばかりです。

とは言え、その本を読むのにふさわしい時を待ち、人を待つ気持ちで、そばに置いておきます。

 

 

積読本の中に、アメリカの生物学者ハスケル博士が著した「木々は歌う」という本があります。

コロナ前に購入したので3年以上「寝かせて」いたのですが、恐らく題名の詩的な響きだけで買ったものと思います。

 

世界各地の12本の木に何度も足を運び、人間を含めた生物の関係性について考察した本ですが、コロナの伝染で痛感したのは、自然やウィルスには、人為的な国境など関係なく、あらゆる生命は互いに影響し合う関係性から作られているという実感です。

著書では、日本の木が2本取り上げられています。

1本は越前市の和紙の原料となる「ミツマタ」です。いつか工業文明が廃れる時代がきたら、木の繊維と水から作られる和紙に書かれた文が残るのだろうと、思いをはせています。

 

著者は色々な素材から出来た紙を擦って、その音を聞きます。

綿花、雁皮紙、コウゾ、みな違う音を詩的に表現しています。手触りで違いを見分けるのが普通だと思いますが、音で聞き分けるというのにはハッとさせられました。

なるほど著名のように木々が歌うのが聞こえるのだなと思いました。

そして、ページをめくる音が好きで、または紙やインクの匂いが好きで紙の本が好きなのかもしれないと思い直しました。

 

 

もう1本の日本の木は350年前から代々手入れをされて受け継がれてきた宮島の盆栽「ゴヨウマツ」で、今はアメリカ建国200年のお祝として寄贈されワシントンにあります。

この「ゴヨウマツ」の盆栽のルーツを訪ねて、弘法大師空海が留学先の唐から帰った後修行をした宮島を訪ねます。

 

一見、人工的に作られた植物に思われる盆栽を、人間との接触を絶たれればたちどころに死んでしまう、そんな持続する関係性がどんなに大切かと述べます。

盆栽作家の話を聞くと、盆栽にかかりきりになると関心の向く方向が、自分からどんどん離れて行き、木のことや、かつてこの木を守ってきた人々のことに向くようになると。

 

日本の資産の一つは間違いなく森林です。

木そのものの価値だけでなく、水や空気の源でもあるからです。

自分に意識が向きがちで悩み多いときは、はるかに寿命の長い木々の世話をすることで、連綿とつながってきた歴史や、はるか先の代までつなげようという「忘我」の気持ちになれるような気がしてきて、春になったら、山や森に行こう、一つでも木々をお世話することをやってみようと思いました。