子供への生前贈与額が異なるケース

Kさんから遺言書についてご相談をいただいた事例です。

Kさんはご主人を10年前に亡くされていました。

その時は遺言書がなく、独立して家庭を持っている3人のお子さんたちも「遺産は全部お母さんにしたら」ということで、配偶者控除で相続税の支払いもなく、遺産分割についてロクに話すこともなく終わってしまいました。

 

今回ご相談いただいたのは、3人のお子さんたちが全国ばらばらに住んでいて、年に一回くらいしか顔を合わせなくなっていることもあり、自分の相続について、誰かが音頭をとっている節もなく、不安になったためでした。

 

と言うのは、兄弟姉妹3人には、住宅購入の時や、孫の進学のときなど、かなりの額の贈与をしており、額も均一ではなかったからでした。

 

遺言書がないまま、法定相続で3分の1ずつで丸く収まればいいのですが、お友達から「法定相続にしようとしたら、子供の一人が、他の兄弟はたくさん生前に援助してもらっている、その分少なくなければおかしい、と言い出して揉めて、その後兄弟仲も悪くなってしまった」と聞かされて心配になったのです。

 

Kさんには、当社の顧問弁護士にも入ってもらって、まず次のことを理解してもらいました。

2019年に相続法の大改正があったためです。

 

① 遺留分を侵害しない限り、遺言書でお子さんの相続分を自由に設定できる。

② 遺留分は相続税評価額ではなく時価の評価額

③ もし遺留分を侵害して訴えられたら、現金で侵害分を払わなくてはならない

④ 相続開始前1年間の贈与や、10年以内のお子さんたちに対する特別受益の贈与も、相続財産に加算して遺留分は計算される

 

Kさんがご主人から相続したのは、ほとんどが不動産でした。

自分の預貯金を足したものが子供たちへの相続財産になりますが、不動産の中には売りにくいものもあります。

子供たちが相続した後、どの不動産をもらうかで紛糾したり、共有になって共同で売る作業を避けたいと思い、処分するものは処分し、遺言書の中で、どうしてこういう分け方になったか書こうと内容を練ることにしました。

 

当社も時価評価の査定でお手伝いし、準備を進めているところです。

 

 

 

折り合いの悪い子の分を減らしたい

Dさんは商売をやっていて、今は長男が継いでいます。

お子さんは2人ですが、次男は結婚した後は、ほとんど寄り付かなくなり、盆暮れもお嫁さんのほうに行くからと、長い間来ていません。

 

次男には、若い頃さんざん苦労させられ、お金の不始末も相当肩代わりしました。

いきおい情として、自分の楽しみを捨てて店を切り盛りしてくれている長男や、自分の介護も積極的にやってくれている長男のお嫁さんに、少しでも多く分けてあげたいと思いました。

 

次男への特別受益は、記録も取っていなくて明らかにするのは難しそうなので、次男へは最低限の遺留分にして、減らした分をお嫁さんにも分けてあげたいという気持ちです。

 

Dさんにも遺言書をお勧めして、遺留分を侵害しない分け方を明記してもらうことにしました。

 

また、遺留分は時価評価ですが、生前贈与は相続税評価でできるので、まだ10年以上は長生きするという前提で、生前に不動産を長男に贈与することも検討して、相続財産そのものを減らすことも検討中です。

 

 

兄弟姉妹には遺留分がない

お子さんのいない方で、兄弟姉妹がいる場合、兄弟姉妹は法定相続権がありますが、遺留分はないので遺言書で配偶者に全部でも、他人にでも指定すれば、兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪)には相続財産は行きませんので、ぜひ遺言書の作成をご検討ください。