相続のご相談では、相続人への財産の分配方法についてが多くあります。

ご相談者のお考えで一番多いのが「法定相続分で分ける」ことですが、相続人によって軽重をつけるのは気持ちの負担が大きいですし、遺言書に表さなければならないので面倒ということもあるようです。

 

法定相続なら、法律で決まっているのだから、とお墨付きを得た気分にもなり気持ちの負担が少ないことは分かります。

そこで今回は、もう一仕事生前にやってみては如何でしょうか、ということで「孫への生前贈与」を活用した事例をご紹介します。

 

非課税制度は手間が大変?

相続は、法定相続にしろ遺言書による相続にしろ、生前に相続を受ける側の気持ちや意見を聞くことは稀です。

子供たちに事前に話したことがキッカケになって、兄弟姉妹が不和になる危惧もあり、最後は、もらった方が勝手に考えてくれ、出来れば争わず仲良く、という線に落ち着くことも多いのですが、ご家族状況によっては、孫への生前贈与をお勧めすることもあります。

 

元気なうちに喜ぶ顔が見られる孫への贈与、相続税対策にも効果発揮孫がちょうど学齢期で教育費がかかる、結婚適齢期で結婚子育て費用がかかる、そんなタイミングでしたら、1500万円まで非課税の「教育資金非課税贈与」や1000万円まで非課税の「結婚子育資金非課税贈与」などを活用して、生きているうちに孫の扶けになるような贈与制度があります。

 

もちろん非課税にすることで、祖父母の眠っている預金を経済活性化とか少子化対策に使おうという国策の側面がありますが、元気なうちに自分の資産の使い途が分かり、孫の喜ぶ顔も見られるというという心の満足は見逃せません。

 

 

110万円贈与は早く始めたい

また、年110万円の贈与税基礎控除内で孫に贈与することもできます。

お子さんが存命している場合は、孫は相続人になりません。

遺言で遺贈することはできますが、それも亡くなったあとのことです。

 

孫は相続人ではないので、亡くなる前3年以内の贈与(2031年には7年以内まで範囲が広がる)は相続財産に戻す、という規定は該当しません。

相続財産が基礎控除額をオーバーしていて、財産減らしをしたい方には「あげっ放し」で良いので適しています。

 

気を付けなくてはいけないのは、通帳などは孫が管理していないと「名義預金」と見られることです。

またお子さんが複数いるときは、孫によって贈与額が異なると、相続時にお子さんたちの間で揉めることもありますので公明正大にしたいものです。

 

 

子に生前贈与する場合のポイント

子に生前贈与する場合は、3年以内(2031年以降は7年以内)の贈与分は相続時に足し戻しになります。モノやお金を戻すのではなく、相続税の計算上戻すことになります。

足し戻す価格は、贈与時のものになりますので、次のような資産は生前贈与に向いています。

・一時的に下落している上場株
・路線価が下がった土地
・賃貸物件や投資信託など、賃料収入や配当などは、贈与した以降はもらった人の収入になりますので、相続財産が増えるのを防ぎます。

なお、賃貸物件は土地は路線価、建物は固定資産評価額で贈与税の計算をしますので、時価よりも低くなる場合が多くなります。