法務省の統計によると、50代以降の方で遺言書を書いたことがある割合は5~10%とのこと。

遺言書が大事と言われていても、やはり相続の現実は、遺言書なしの遺産分割協議が大半です。

 

分割協議も、例えば両親がいて父が亡くなった場合の「1回目」は、すべて母に、という結論で、問題先送りのケースも含めて比較的スムーズに進みます。

その母が亡くなった「2回目」が問題です。

 

 

複数の子供、お子さんがいらっしゃらなければ兄弟姉妹、代襲相続の場合は、ほとんど会ったこともない甥姪などが法定相続人として協議に加わってきます。

民法では遺言書がない場合は、法定相続割合で「平等」に分けるよう規定されています。

 

ところでなぜ問題かと言いますと、「平等」に分けたのでは「公平」でないケースも想定して、「寄与分への配慮」と「特別受益者への調整」という規定があるためです。

 

「寄与分への配慮」は、家業を助けた、生活費を援助した、看病介護をしたなど、亡くなった方の財産の目減りを防いだり、財産を増加させる貢献をした人に法定相続分以上の財産分けを認めています。

 

また「特別受益者への調整」は、生前にお金をもらった、援助を受けたなどは遺産の前渡しとして考えて、その分を法定相続分から引くことです。

 

子供の住んでいる場所、仕事、家計状況、親との折り合いも異なっているのが通常です。

特別受益に関しても、結婚祝い、新居の援助、独立時の資金援助など、理由も金額もバラバラです。死後の墓守を誰がするという問題もあるでしょう。

 

 

結局のところ、「公平」に対する感覚が人それぞれなので争いが起こります。

それほど、人は「平等」よりも「公平」に敏感です。

生前の資金援助については、金額がはっきりしている場合が多く、渋々でも納得されやすいですが、寄与分についてはなかなか金額で表すことが難しいものです。

 

介護のために仕事をやめたり転職して収入が減った、ノイローゼになった、遺産である家やアパートをきれいに保守したので高く売れた、などは金額で表しにくいものです。寄与した人からすれば法定相続は不公平です。

 

分割協議の難しさは、この「感情」と「実額」の不公平感に起因します。

分割協議がまとまらずに調停になった場合は、審理回数が6回程度、期間にして1年くらいが多いですが、半年以内もあれば20回以上というケースもあります。

 

 

時間を確保する必要があるだけでなく、交通費の負担や主張を考えたり、結構な労力です。

 

遺産分割調停による合意が難しいときは、遺産分割審判に移行します。

それでもまとまらない場合は高等裁判所へ・・・という長期戦になります。

また分割協議がまとまらない間は、遺産は凍結されてしまいます。

 

出来れば、遺言書で、「平等ではないけれど、私が考える公平はこういう分け方だから、争わず従ってくれ」と書いておきたいものですが、介護がからんでくると、子供の寄与する割合や親子の情も刻々と変わってくるので、結局遺言書なし、というのが現実かも知れません。

 

ご相談を受けていて、時々明朗闊達な方もいらっしゃいます。

生前に遺産分配について子供たちに明らかにして「俺の財産なんだからどう分けようと文句言うな」という方や、生前贈与であらかた分けてしまって、あとは子供の世話にはならないから心配するな、という方などです。

 

私の率直な感想は「大切な時間を争いごとで使って欲しくない」という気持ちです。

どこかに気がかりが残って生活が今一つ楽しめませんし、ストレスで心身とも弱ってしまう方も多く見ています。

諦めも納得の内、という場合でも、少しでも前向きになって頂けるよう、ご一緒に対応しますので、どうぞご相談にいらして下さい。