忘れない記憶、忘れていい記憶【この記事を音声で聴くにはQRコードまたは以下のURLから】
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こんにちは。すまいる情報代表の竹内です。

繁華街やターミナル駅を通ると、驚くほど多くの外国人旅行者を見かけます。

 

コロナ前は単身のバックパッカー風の旅行者が多かったですが、コロナ後の今はご家族連れが多いように感じます。

お子さんがいると飽きさせないために、有名観光地やショッピング、ゲームセンター、日本食グルメが目的になるのかも知れません。

 

日本食と言っても、鮨、ラーメン、とんかつ、お好み焼きといった庶民食ですが、これらは私たちが子供の頃は、まさに「ハレ」の日のご馳走だったものです。

 

 

小説家の池波正太郎さんは食通で食べ物の著書が多いですが、青い山脈や昭和残侠伝に出演した俳優の池辺良さんも料理に関して味のあるエッセイを書かれています。

池波さんも池辺さんも東京っ子ですから、子供の頃のご馳走は江戸前の料理ということになりますが、池辺良さんの「天丼はまぐり鮨ぎょうざ」という著書は、そのまま子供にとって「ハレ」の日の料理名になっています。

家に来客があった時の「おすそ分け」を楽しみにされていた方も多いのではないでしょうか。それにしても子供の頃の食べ物は記憶に残っています。

 

 

認知症では、すぐ前の事は忘れてしまうけれど、昔のことはよく覚えていると聞きます。

看取り医として終末医療や認知症に取り組み、多数の著書がある大井玄さんによると、臨床医として数多くの看取りに立ち会って、どの国でも生きている満足度は加齢とともに上昇するそうです。

 

満足度が上昇する秘訣は、生きていられて有難いという感謝があることと、古老のように人から尊重されていることです。

老耄は、癌の疼痛はなくなり、迫りくる死への恐怖もなくなる、忘れていい記憶を忘れさせる自然の用意した慈悲深い仕組みだとおっしゃいます。

終末には最愛の家族の顔さえわからないほどに認知能力が衰えても、介護が良ければ、菩薩のような笑顔で最期を迎えることが可能だとのことです。

 

これからやってくる超高齢社会においては、認知症は異常な病気ではなく、せん妄行動が起こりにくくするために不安を取り除ける環境をつくるほうが大切だと提言されています。

 

景色も人も慣れ親しんできた土地に住み、ゆったりとした時間に身を委ね、年長になればなるほど尊敬される環境です。まずは身近なところから小さな試みをして行きたいと思います。

 

 

いま来日されている観光客の方々は、母国で認知症になったとして、ハレの日のご馳走として「天丼はまぐり鮨ぎょうざ」を記憶しているかもしれないと思うとちょっと愉快ですね。